日々翻訳

出版&映像翻訳者・川岸 史の仕事情報を掲載するページ。ドイツ語と英語の翻訳をしています。

ドイツ語を選んだ理由

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なぜドイツ語を勉強したのかと聞かれることがときどきあります。

 

私の通っていた女子校では一年次にフランス語が必修であったので、とくに高校時代の友達はその後もフランス語を勉強することが多く、独文科を選んだ私は「なぜ?」と疑問を持たれることが多かった。

 

たしかにフランス語の方が圧倒的に美しい響きを持っているし(ドイツ語は馬と軍人の言葉とも呼ばれる)、フランス文化も素敵だし、普通の女の子なら独文科よりは仏文科を選ぶだろう。

 

でも私には、独文科を選んだ理由が明確にありました。

 

高二のときに、マレーネ・ディートリッヒの映画を観て彼女に惚れこんだため、大学では彼女について研究したいと思ったからです。

 

間諜X27』という映画で、間諜に向いてるかどうか試される場面でディートリッヒはこう言います。

「生きることは怖くないわ。死ぬことも」

 

私はこのシーンを見た瞬間、雷に打たれたような気持ちになりました。

 

こういう場面では「死ぬことなんて怖くないわ」というのがセオリー。「生きることは怖くないわ」と言って、そのあとから付け足すように「死ぬことも」なんて、そんなことを言ってのける人を見たのは初めてだったからです。

 

でもそのとき初めて気がついたのですが、私は当時、生きるのが怖かった。

 

ところがスクリーンに映る彼女は自分の思う通りに動き、何者をも恐れない。

生きたいように生き、あっさりと死んでいく。

そんな彼女が、ものすごく格好良く見えました。

 

映画の台詞に感動したのだから、監督か脚本家に感謝すべきですが、何しろ彼女が言ったことに説得力がありました。だから彼女の存在が私の胸をぐっと掴んだのです。

 

その後彼女の私生活について調べてみると、とにかく自由奔放に動き、また愛のために生きた人なんだということがよく分かった。自分に自信があって、やりたいように生きた人なんだなあ、と思いました。

そのせいで周りが迷惑することも多々あったと、娘のマリア・ライヴァは書いていますが、私はそれを読んでなんだかほっとする部分もありました。

 

その後大学に入りドイツ語の勉強を始めてみると、ドイツ語自体が厳格で合理的だということが分かりました。そしてそれはまったくドイツ人の性質を反映しているように思えました。

文法が難しいといわれますが、裏を返せばそのルールさえ踏まえていれば読み間違えることはない、ということ。だからかえって英語の方が、例外が多くて、どういう意味なのか捉えるのが難しかったりする(同じ言葉でも文脈によって意味が違ったりする)。でもドイツ語ではそういうことはあまりありません。

そういう性質も、自分に合っていたような気がします。